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2008年4月20日 (日)

鳥人計画

Photoどんどんと続いております、東野圭吾さん

新潮ミステリー倶楽部 特別書下ろし 1989/5に発行された
“鳥人計画”を読んでみました。 やっぱり凄い!!

注意して書きましたが、以下
若干ネタバレ要素が含まれますので御注意を!

なにやら意味深だけど、どう繋がるのか全く想像がつかない4ページ弱の『前兆』、さらに2ページ強で事件は発生する。天才ジャンパー楡井明選手が殺される、それを恋人の杉江夕子さんの視点で書かれている。で、すぐに佐久間公一刑事が登場。多くの作品のように、章毎に違う登場人物の視点で書かれていく。

『事件』の7章は楡井明選手のコーチである峰岸貞男氏の視点で書かれている。ここまでで事件のアウトラインが描かれているが、読者である私にはこの段階まで犯人が誰か全くわかりませんでした。それが突然 “大丈夫だ、と彼はつぶやいた。大丈夫、うまくいきそうだ。”という1行で、いきなり犯人暴露! ここまでがたったの57ページ。

訳が分からない?? こんな書き方の小説は初めて。反則でしょう!?
佐久間公一刑事はそのてん、流石です。『事件』の5章、関係者の事情聴取で峰岸貞男氏を怪しんでいる。ま、作品中の刑事なので私よりはるかに凄いのは当たり前。というか凄いのはいつものごとく『東野圭吾さん』ですが(笑)

でも、こんなのは序の口。峰岸貞男氏へ自首を勧める警告文,警察への密告文。事件の真相はなかなか分からないし、峰岸貞男氏同様に警告者/密告者も想像できない??
いつしか、アマチュアスポーツの問題点に移っていく。この辺で後になってとてつもなく重要になってくる『前兆』を忘れてしまう(笑)

その後はとっても面白い展開に。謎解き的な点はもとより、楡井明さんの性格というか考え方が素敵。ものの捕らえ方、取り組み方の素晴らしさに感銘を受けるというか、羨ましくなるというか、私もそうありたいと思える半面、ちょっと嫉ましくなってきさえする。

『動機』の5章での「これで峰岸さん、許して、くれる、かな」には驚きというか、人間としての素直さ、義理と恩義と謝罪の気持ちが素適でした。
にもかかわらず、已むを得ない人間模様での杉江夕子さんの行動。やっぱりヒューマン物書かせたら東野圭吾さん凄い! ここまで引っ張っといていきなりかよ!!

終盤になって、一気に今まで訳が分からなかったパズルがはまって行く感覚!
でも、全部を明確には書かないことによる美しさを読者に与える東野圭吾さん。
でも、本当にこの小説で夕子さんはどうしたのだろう? 最終章を読むとどちらにも取れるような気がする。そして峰岸貞男氏の罪はどうなるのだろうと????

でも本当の最後5行に全てがこめられていて、上記の私の考えなど吹っ飛んでしまうような思い。
科学的解明と探求は大事、でもそれは手段であって目的ではない。やはり楽しみ、自己研鑽のためにスポーツに打ち込む人間の素晴らしさ、それを見失わずに上手く手段である科学技術を利用する。けして科学技術に操られてはいけない。でも、魔力に心を奪われやすい人間の弱さ、それを忘れずに自覚することが人間にとって大切なのかもしれない。

と言っておきながら、どうでもいいような「一人言」突っ込み??
『解明』の4章でジャンパーのサッツ時の“加速度ベクトル線図”さらにそれを“垂直/水平成分にベクトル分割した時間変化曲線”なんていうのも出てくる。
ちょっと残念なのがグラフの書き方。やっぱり図のタイトルは下に書くのがルールですよ。それに横軸/縦軸はどんなに当たり前でもきちんと軸タイトルと単位を正確に書くべき。
特に縦軸の“ m/S/S ”はいただけない。 せめて“ m/s/s ”、大文字の“S”じゃ、ジーメンスになってしまう。加速度はきちんと“ m/s2 ”と書いて欲しかった! 
それに、ニッカネン選手の下方向への加速度が飛び出してから約0.04秒後に最大値約15m/s2と重力加速度(G≒9.8m/s2)を超えている。横方向の速度を空気抵抗をうまく使って下方向の力に変えれば得られますが、ジャンプで揚力を得ようとするのは分かるしできるが、その逆をする力が発生するとは思えない?? ま、そんなことは、この小説ではどでも良いのですが、ここでちょっと詰まってしまった(笑)

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